短歌
肌寒く金木犀の香る朝うつろう四季の確かな感触
くずれゆく百四十の言の葉を三十一文字がとわへとつなぐ
短文で心の機微を残したくさえずる鳥の小さなのぞみ
ふと灯る緑の燈火君の影姿見えずも残る足跡
朝カレー麦酒とともにかき喰らう 新宿BERG馴染みの味
本借りて読了せずに返す日々「それ意味あるの?」と冷ややかな目
「積むだけで賢くなれる気がするの」重なる本と変わらぬ自分
音弄り欲の数だけ掛けぐるう「ままよ」と見切り世に出す覚悟
日常をなぞって残す写し文字かえりみるとき彼の日に戻る
「あぶねぇぞ!」なんば交差路 一鬼夜行 慄きみれば(青やないかい!)
ウタマシン頭の中で飛び跳ねる認知資源の大飯喰らい
音もなく井戸端会議書きじゃくる小人の遊び枝葉を伸ばす
Your Attention Is All I Need 奪い取りたい君のココロを
「若いね」と言われ育った職場にも新芽集まり僕が古株
お買い得あれもこれもとカゴに積むここはコストコ会計注意
継続は不継続をも許すこと いつか坊主になるその日まで
伝えたい気持ちを音に難読化なんなの歌人ツンデレなのか
鏡面で頬赤らめる照れ屋さんバイバイしてもすぐ顔見せる
はみ出したクリームチーズ咎めなし つわものどもがリッツパーティ
いまはもう詠めぬ歌あり色褪せたリトマス紙には青赤見えぬ
人のこと好きになることはあるんだ瞳に映る我人でなし
『ミルク1たまごがあれば2個買って』家には何故か並んだミルク
なつかしの学友たちの夢の後覗いてみたいそっと遠くで
かおる豆アラビキ粉をYouデムラス駱駝のセコブ 世界を巡る
揺れるバス 本を握って眠る娘を抱えて左手でスクボする
バスの中借りた絵本ではしゃぐ姫ぼくは隣で井戸端会議
モゾモゾと動けどいまに出てこない布団ミノムシ冬の訪れ
突沸しコンロが白海に沈む難航する朝のサルベージ
冬のそら定番ライン並んでる北陸グレイ関東ブルー
ポストした投稿の下きみがいた「久しぶりだね」ぼくの声だけ
生み出した言葉にざくり鉋掛け削り屑をも等しく愛す
ふぞろいな歌集ナッツ見た目は悪いけど初めてつくったの、よんで。
発言の手綱引く日の短さよ拡散するは逃げ馬の如
鉄鍋と共に過ごしたササラさん細る其身に別れを告げる
使い切り!化粧ボトルは減るけれどなぜか嬉しい実績解除
空いた土地みなマンションに成り果てた つぎつぎつくる未来の廃墟
ランチどき賑わう香りと一緒に自席で食べる塩のおにぎり
秘められた光る言葉を手でつなぎセカイをひらく小人の営為
ご自由にお嗅ぎくださいスパイシー無色おむすびカレーに変わる
隣人がカレーを食べている横で食べるおにぎり実質カレー
今はもうLLMに聞かされるばぁやの知恵とじぃやの自慢
はまらない形の違うひとかけら型に合わせて角を削らむ
番頭の野球中継とケロリン父にねだったファンタは噴いた
井戸端の過去の頁を訪れて名無し刻みし文に顔付け
うたよみて空の己が浮き彫りに語彙と経験足らずにヤバし
いつの日かギーク夢見た青年よ叶わぬ想いスーツを纏う
あさぼらけ日記ページの真っ白にシュプールえがくコバルトブルー
何気なく君のそばまでカットイン順番待ちのゴンドラ乗り場
在庫なし丁寧ぐらし支えるは何時でも買える金の力よ
食べたでしょ!あたしの分の萩の月言い訳できない欠けた三日月
新橋に吸い込まれてく人のなみ機械音だけゴーゴー奏
音を吸う地下階段を登りゆく出口に願う白銀世界
パチパチとはじけ音立つ揚げ立ての唐揚げつまみ飲むハイボール
しゃらくせぇトビラもろともぶっとばす短歌爆弾ともにつくろう
能楽の舞台装置に技が映えるDataFamから浴びる熱狂
おがくずかおる 時を駆け湯屋のうら黄帽の子たち木屑で遊ぶ
動機すらアルゴリズムが奪う世でジブンイズムが試されている
外国の洒落た小箱の粒よりも君がくれる板チョコが好き
新橋の地上へ向かうヒトどもは頭ゆらゆら行進ゾンビ
春風にそそのかされて上衣脱ぎビル風受けて詐欺に気づく
【重要なお知らせ】名乗るおてがみを読まずに食べるくろやぎのごと
知ってるか駅ナカメタルボックスは時空転移の装置なんだぜ
新しい顔よと受けた僕の胴なぜかあなたと会った気がする
ちょっとだけ認知世界が変化した玉転がしで▲(さんかく)知って
内面の解放率は語彙に拠ることばを知りて出力あげよ
閏年いたるところで「ぬるぽ」「ガッ」君は知らない29日目
朝早く星のカービィを求む列買えなくなると欲しくなる性
カービィ買うとなぜかバーガーおまけつきマクドナルドのハッピーセット
短足の丸いピンクの人形を作る工場のウデの高まり
初期化中ちょこのプシュケが抜けてゆく姿カタチの同じ抜け殻
目覚めたら知らない声で鳴くキミは僕のことなど覚えてない
あほ面ですぐ助け呼ぶその声がなぜか聞こえる気がする 今も
街なかのマリオカートの始まりだ歩道にバイク飛ばす警笛
香草を米の衣で包み込む鼻で感じる東南アジア
降り立つは霧煙舞うハノイシティゆくは常夏ホーチミンシティ
無力かな電波吹かない異国でのスクボいじりはホテルの中で
機内での「つながらない」が快い右手にペンを心は紙に
見慣れない建物見つけ「なんだろ?」と隣に居ない君に聞きたい
不老不死つまんねえだろ?どうせなら俺はお前と老いてゆきたい
音唸りつめたいくしゃみエアコンも体調くずす三寒四温
「あああああ」お客様ダメ!困りますポッケの中の猫のイタズラ
期初の朝いつもの列で並び見るいつもの駅はいつもと違う
変わらない先住民に喰らわせろ「変」のかたまり新社会人
溢れ出る元気パリピの声響くWe're SHAKE SHACK!!渋谷OPEN!
観光地 外貨稼ぎのお値段に麻痺し切れない庶民のさいふ
店内の僕とあなたの島だけが日本に還る異国の飛び地
「アリガトウ」ぐぐっと詰まる国境線言い返したい「ありがとう」って
竜田揚げ求めマクドへ小走りで木々の輪郭浮き出る陽気
金曜日ふと目に留まる新卒者どうかそのまま純粋でいて
降りそうな雨の雫に膝を折り老若男女がShall We Dance?
非同期に進められれば最高と頭は望みタスクは止まる
バグじゃない?人の気持ちと裏腹にストップ・ゴーが定まるタスク
空想にリアル溶け込むアニメィション聖地を巡り息吹に触れる
よるさんぽ「ずっと真夜中でいいのに。」夜しかいない小夜と夜遊び
水たまり恐れ知らずに踏み抜ける若さ失いまわり道かな
みつけてね暮らしにひそむ五と七は楽しみわかす魔法のことば
コロナ禍で知らぬ間に来ていなくなる繰り返されるピーカンの夏
ピリオドの打たれぬ夏や虚無の日々果てなく続くエンドレスサマー
雨風で冷えた身体に熱いシャワー潜水あとのひととき浮かぶ
冷え切ったウエットスーツに溜まる湯は身体をとかす天の羽衣
願わくば甘苦味わう人生の時折々で歓に浸らむ
やめとけばよかったものを昼移動サンダル買って海へいきたい
夜が明けて琵琶湖に道ができている「成瀬」は信じて駆け抜けてく
洗ってあらってもなお残ってる食べたら増える流しのお皿
キミだった日々の疲れを誤魔化して支えてくれた朝のカフェイン
「さ、うなぎを食べに行こうか」夏あつた蓬莱軒のひつまぶし 混ぜ
名が変わり見慣れない顔「哲学」は変わらないってCo-Senseしてる?
乾き出す雨で塗られた文字「止まれ」水玉はじき草木は踊る
アスファルトすらとけるほど恋したいすら思えないほど蒸す夜空
目に留まり読んだ漫画に光る歌きみを笑かす呪文を創れ
すし詰めの列車が黒く染まるまえ秋の初風吸い込み吐いた
音もなく目で叩かれるクラクション答えられないきみのクエスチョン
なだらかにトランジッションする季節残り続けるぼくのミッション
風もなく汗ばむ朝を繰り返すあの日感じた秋はいずこへ
朝道に黄帽の波と笑い声寄せては返し一人佇む
衣かえ駅が黒へと染まってく秋は短し旅せよオトナ
寒さ来て久方ぶりのネクタイのダブルノットのかたち決まらず
懐かしい香り漂う ふたひらく金木犀の歌のカンヅメ
休日にヱビス片手のつまみ食いキムチと卵しあわせ溢る